ねこのすっぱ抜きサラダ 密やかな結晶 小川洋子 書評
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密やかな結晶 小川洋子 書評

 6点

 この島では常に何かが失われていく。リボン、鈴、エメラルド、切手、香水……。失われたモノは必ず廃棄しなければならない。たとえ手元に残しておいたとしても、それがはたして何であったのか思い出すことができなくなってしまう。もしも記憶が失われなかったら、その人物は異端者と見なされ、秘密警察によってただちに粛清される。粛清された人々は二度と社会復帰することはなく、その生死も定かではない。そうやって消滅現象は拡大し、やがて取り返しのつかない事態をむかえることになる。

 本書を読んでまず思い浮かべたのは「アンネの日記」である。異端者狩りや秘密警察といった設定は、ナチスのホロコーストを容易に連想させる。
 アンネとは立場が逆になるが、主人公はそんな異端者を自宅でかくまっている。記憶を失うことのない異端者は、思い出や記憶の重要性をくり返しうったえるのだが、記憶を失った”わたし”にとって、失われたモノは、たとえどんなに大切なモノであっても、存在そのものを受け入れ難く、強烈な違和感を覚えるだけ。記憶しておこうという気力すらない。
 朝、目が覚めると、「木の実」が消滅していた。窓を開けると、街路樹に実っていた果実がすべて地面に落ちている。木々の周りを見たこともない物体が飛び回っているが、それが「鳥」であることに気づくことはない。消滅は、他愛のない物から、人間のアイデンティティに関わる重要なモノまで多岐に渡る。
 物語は、ラストにいたって、この作品世界を根底からひっくり返すような展開をむかえる。しかし、論理的な結末をのぞむSFファンにとっては物足りなさを覚えるかもしれない。なぜ記憶が失われるのか解説されていないからだ。本書はあくまでもファンタジーとして読むべきである。
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