ねこのすっぱ抜きサラダ 沈黙博物館 小川洋子 書評
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沈黙博物館 小川洋子 書評

 6点

 偏屈な老婆からの依頼は、人の形見を扱う博物館をつくること。博物館技師である”僕”は、老婆の娘とともに、形見を整理・分類し、また、誰か亡くなった人がいれば、死者の形見を次々とコレクションしていく。ただし、故人の形見は、お願いして分けてもらうのではなく、盗み取ることこそが肝心なのだと老婆は言う。
 おりしも町では爆弾魔が世間を騒がし、女性を狙った異常犯罪まで起きている。死者が増えれば形見も増える。やがて疑いの目は、被害者の周辺をうろつく”僕”に向けられるようになり……。

 この物語はファンタジーだ。それも、暗く重厚なファンタジーである。ミステリーの要素もあるが、犯人なんてどうでもいい、要は世界にたった一つしかない形見専門の博物館ができればそれでいいのだ。主人公たちは、いつの間にか老婆の言葉に惑わされ、次第に感化されていく。
 この世に生まれた者は誰であれ、やがて死に、この世に何らかの痕跡を残していく。人の思い出は時が経つとともに風化していくものだが、死者が遺した形見は誰よりも雄弁に人生を物語ることができる。
”僕”は、この町に取り込まれ、抜け出せなくなっていく。兄に宛てた手紙は宛先不明で戻ってくるし、休暇を取ろうとした矢先に体調不良でダウンしてしまう。殺人犯の正体に気づいて逃げ出し、とっさに駆け込んだ駅にはいつまで経っても電車は来ない。(この辺り、カポーティの「遠い声、遠い部屋」を連想させる)
 庭師にしても、彼の伴侶である家政婦にしても、先祖代々この屋敷に仕えており、外の世界を知らないというし、まだあどけない少女もまた、老婆の跡を継ぐことが決定づけられている。そして”僕”はというと、仕事を達成した後も帰ることなく、博物館の受付をしているのである。彼もまた、屋敷に囚われてしまったのだ。
 この先も死者が絶えることはない。形見の蒐集はいつ果てることもなく永遠につづくのだ。
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