シュガーダーク 新井円侍 書評
共同霊園に連行された囚人ムオルは、墓守の少女メリアと出会う。墓に葬られるのは、見たこともない巨獣ザ・ダーク。その存在は一部の人間にしか明かされていない。メリアは、ザ・ダークを封じるための重要な存在だった。ムオルは、過酷な運命のくびきからメリアを解放することができるのか? スニーカー大賞受賞作品。
なかなか読ませる作品である。静かな夜の物語といったところだろうか。ムオルに自由はないし、メリアは太陽の下に出られないという設定なので、夜の墓場が舞台となる。他のライトノベルに見られるような華々しい戦闘シーンはない。ザ・ダークとの戦い方も変わっている。非力な人間の攻撃など通用しない。ただただ一方的な攻撃に耐えしのぶだけ。その姿はこれまでにないほど痛ましい。マンガ版も読んだが、絵におこすとより一層グロテスクである。そんな無残な環境からメリアを救い出すには、ムオルは全てを投げうって大きな代償を払わなければならない。
結末にいたって、ムオルの置かれている環境は一変する。はたしてこれはハッピーエンドと言えるのだろうか? 彼らの今後が気になるところだが、今のところ続編が出たという話は聞かない。文才はあるようなので、このまま埋もれていくのはもったいない作家である。

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