雨ふる本屋 日向理恵子 書評
6点
買い物帰りのルゥ子は、雨に降られて図書館で雨宿り。”足の早いかたつむり”を追いかけてたどりついたのは、ふしぎな古本屋。そこでは店内に雨が降り、言葉を話すドードー鳥が店長をつとめている。ここにある本は、人に忘れられた物語。記憶は雨となってふりそそぎ、本の種を生む。種は物語の花を咲かせ、やがて本になる。ドードー鳥の店長は、最近の本はつまらないものばかりだと嘆き、本の種を育む”ほっぽりの森”で何かが起きているに違いないと推測します。しかし、ほっぽりの森に行けるのは夢を抱いた人間だけ。はたして森で何が起きているのか? ルゥ子の冒険が幕を開ける。
まずタイトルに惹かれた。本にとって雨は大敵じゃないかと思って読んでみると、こういうことらしい。本の素は人間の記憶であり、記憶は涙となって人間から湧いて出る。涙の背景にある感動が物語を生み、書物としてしたためられる。そんなところでしょうか。
本書自体の物語は、「千と千尋の神隠し」を彷彿とさせるお話で、母親を妹にとられて面白くないと思っていたルゥ子が、自分を見つめ直して成長する、というジュブナイル小説になっています。短い長編で、文章もすっきりしているので、小さなお子さんでも飽きることなく一気に読める。児童文学ファンにおすすめです。

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