からくり夢時計 川口雅幸 書評
からくり夢時計―DREAM∞CLOCKS
posted with あまなつ on 2012.01.21
アルファポリス(2008-10)
売り上げランキング: 139671
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6点
学業に厳しい兄は、実家の時計屋を捨てて家を出た。就職先は、商店街のライバルである大手スーパー。小6の聖時は、そんな兄のことが大嫌いだった。いつものように兄弟ゲンカをしてふてくされていた聖時は、店舗の片隅で不思議な鍵を見つける。鍵を古時計のゼンマイにかけると、まばゆい光に包まれて、12年前の世界にさかのぼっていた。
亡くなった祖父や母、そして、幼い頃の兄との出会いが聖時を変えてゆく。兄には厳格な面影はなく、自分と同じ、勉強嫌いで遊び好きな活発な少年だった。いったい何が兄を変えたのか? 聖時は、家族の重大なターニングポイントに深くかかわっていくことになる。
前作「虹色ほたる」と比べても文体に変化はなく、漫画的な口語体で統一されている。やはりそこはちょっと苦手である。さて、それではストーリーはというと、タイムスリップをしたというのにほとんど悩むこともなく、少年時代の兄と遊びほうけているだけ。兄との絆を描きたかったのかもしれないが、それらしいエピソードはラストにちょっとだけ顔を出している程度。そこをもっと深く掘り下げてほしかった。
この手のタイムスリップもので思い出すのは、広瀬正の「マイナス・ゼロ」である。昭和7年にタイムスリップしてしまった主人公が、やはり自分の若かりし頃の家族に出会うという話なのだが、特筆すべきは、その時代の背景を綿密に調べ上げているところ。「ALWAYS 三丁目の夕日」的なノスタルジーが好きな方は楽しめること間違いなし。もうずいぶん前に読んだきりなので記憶があいまいなのですが、「良質な小説」というのはこういう本のことなのだろうと思わせてくれた一冊です。ぜひご一読あれ。(いつか読み返してレビュー書きます)
マイナス・ゼロ 広瀬正・小説全集・1 (広瀬正・小説全集) (集英社文庫)
posted with あまなつ on 2012.01.21
集英社(2008-07-18)
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