ねこのすっぱ抜きサラダ 小川洋子
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寡黙な死骸 みだらな弔い 小川洋子 書評

 5・5点

洋菓子屋の午後……子供を亡くした私は、息子のためにショートケーキを買おうと洋菓子屋に入る。しかしカウンターに人気はなく、キッチンには泣いている菓子職人の姿が見える。息子の死をうまく処理することができない私は、声をかけることを忘れて思い出に浸る。
果汁……母子家庭で育った同級生の女の子。僕は彼女に誘われて食事をすることになった。同席しているのは政治家の男。どうやら二人は初対面の父娘関係らしいのだが……。
老婆J……アパートの隣人Jさんとふとしたことがきっかけで近所づきあいをすることになった私。彼女の家庭菜園からは手の形をした人参がよく獲れる。そんなある日、私のもとに警察が訪ねてきて……。
眠りの精……父の後妻はとても若く、「ママ」と呼ばれることをとても喜んでくれた。ママは小説を書いていて、いつも作品を読んでくれるのだが、幼かった当時の私には内容を理解することができなかった。ある日、ママは家を出て行ったきり戻ってこなかったのだが……。
白衣……病院の秘書課に勤める私は、先輩から医師との不倫関係について愚痴を聞かされる。容姿も所作も完璧なまでに美しい彼女が、一人の医師に振り回されているのだという。そこで彼女がとった行動とは……。
心臓の仮縫い……鞄職人の元を訪れた女性は、生まれつき心臓が体外に飛び出しているのだという。その心臓を容れる鞄を作ってほしいと依頼されるのだが、事情が変わって依頼をキャンセルしたいと申し出る。そのとき職人は……。
拷問博物館へようこそ……上の階で殺人があった。刑事が聞きこみにやってきた、ただそれだけ話しただけなのに、私は彼にフラれてしまった。理不尽な別れだった。私はふと、街中でみかけた拷問博物館に足を向けた。
ギブスを売る人……親戚中から疎まれている異端児の伯父。怪しい商売に手を染めては逮捕されてしまう。その数奇な人生を振り返る。
ベンガル虎の臨終……夫の不倫相手の部屋に乗り込もうとした私だったが、なかなか踏ん切りがつけられないでいた。たまたま通りがかった屋敷の庭で、死の床に臥せる巨大な虎を見かけて……。
トマトと満月……ホテルにチェックインし、部屋のドアを開けると、見知らぬおばさんが立っていた。その後もおばさんはいたるところに現れる。彼女は小説家を名乗り、大事そうに原稿の束を抱えていた。本のタイトルは「洋菓子屋の午後」。しかし、著者の写真と彼女とは似ても似つかない容姿をしていて……。
毒草……音楽家を志す少年とパトロンの老婆。彼と過ごすときだけが唯一の愉しみだったが、あることがきっかけで彼は老婆の元を去ってしまう。

」には爽やかな印象の物語が収められていたが、本作のそれはずいぶんと趣が異なっている。全編にわたってダークでグロテスクな雰囲気に満ちている。著者の新たな一面を味わうことができる一冊でした。小川洋子を読み始めたばかりの時期に出会うのはまだ早かったかな……。

海 小川洋子 書評

 6点

……泉さんの実家に結婚の報告に行く僕。夜中、彼女の弟の部屋に泊まることになり、彼がこの世にたったひとつの鳴鱗琴(めいりんきん)の奏者なのだと明かされる。その楽器は、ザトウクジラの浮き袋でできていて、海からの風によって奏でられるのだという。”僕”と泉さん一家がこの先どんなお付き合いをしてゆくのか、想像するに微笑ましい。
風薫るウィーンの旅6日間……ウィーン旅行で同室になった琴子さん。私は、琴子さんに付き添って、死の床にあるという昔の恋人を訪ねる。目の前で衰弱し、彼が息を引き取るのを看取るのだが、実は……。「なんじゃい」という結末なのだが、やはりこれも微笑ましい雰囲気に満ちている。
バタフライ和文タイプ事務所……和文タイプを叩く手は、まるで羽をひらめかせる蝶のよう。決して姿を見せない活字管理人との文字をめぐるやりとり。活字に対するフェティシズムについて描かれているのだが、これはもう著者にしか描けない世界だろう。
銀色のかぎ針……電車で見かけた編み物をする老婦人。祖母との思い出が去来する4ページのショートショート。
缶入りドロップ……幼稚園バスに落ち着いた運転手と園児の交流を描く2ページのショートショート。
ひよこトラック……ホテルのドアマンと、アパートの大家の元で暮らす孫娘の交流を描いた好編。少女は、母を亡くしたショックから声を発することができない。アパートの前を通り過ぎるひよこを乗せたトラックがお気に入りなのだが、ある日車が横転してしまい……。
ガイド……バスガイドの母を持つ”僕”。ママがガイドするツアーに同行することになり、隣り合わせの席についた小父さんと出会う。「題名屋」を名乗る小父さんが、僕との交流につけてくれた題名とは? 著者原作になる「博士の愛した数式」を彷彿とさせるハートウォーミングな一編。

 小川洋子の作品に触れたのは(映画を除くと)はじめてなのだが、たいへん気に入った。極力無駄を省いたスマートな文体で、さくさく読める。物語もシンプルで嫌味がなく、ほっこりした気持ちにさせてくれるものばかりだった。(もちろん、こういった作品ばかりではないのだろうが)これからしばらくは小川洋子作品を追いかけてみようと思う。そんな気にさせてくれる、たいへん良質な短編集である。

 

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SF・ファンタジー系の小説、漫画、映画のレビューおよび、8匹のねこが生息するペットブログを展開中☆

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採点は10点満点です。
6・5点以上がおすすめ。
6点は佳作。
5・5点は好みによる、といった感じです。

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