ねこのすっぱ抜きサラダ 桜庭一樹

推定少女 桜庭一樹 書評

 5点

 パトカーに追われて逃げ惑う15才のカナは、身を潜めるために開けたダストシュートの中で、裸のまま横たわる少女と出会う。彼女の体は氷のように冷たく、その手にはしっかりと銃が握られていた。はたして少女の正体は? そして、カナの運命やいかに?

 こうしてカナは記憶喪失の少女と共に逃亡するはめに陥るのだが、最初の100頁ほどは疾走感があってオモシロかった。その後、逃走中だというのに「桃鉄」をやったり、ショッピングを楽しんだりと、緊張感が消え失せて、冗長な展開になっていく。
「白雪」と名づけた少女の神秘性も薄く、読者を惹きつけるだけの魅力は感じない。
 RPGゲームのマルチエンディングシステムのようにラストが3つ用意されているのだが、どれもしっくりこない。選択肢によっては、肉親との血みどろの葛藤もなかったことにされており、家出少女が帰ってきたよ、で終わり。葛藤はどうした、葛藤は!
 それでも、子供対大人の構図を描く中、ハッとさせられるようなシーンもあった。カナが義父を傷つけたことに対して、母親が激情にまかせて漏らしたセリフ__「どうしてこんなことを! あの人には恩があるのに! 子連れで拾ってもらって、家も広くて、高校も大学も出してくれるって言っていて、恩があるのに! 恩を仇で返すようなこと!/この手で殺してやりたい!」
 この世で唯一の味方だと思っていた実の母親に、こうまで言われたら誰でも絶望してしまうだろう。(最終的にはこのセリフもなかったことにされてしまうのだが)
 本編に登場する大人はみんな自分勝手で、嫌味なキャラクターばかりである。(現実ではそんなことないと思うが)それに対し、カナを含めた少年少女は、現実に絶望し、自分の置かれた境遇を嘆いてばかりいる。
 この物語は、思春期ならではの、大人に対する精一杯の抵抗を描いた桜庭一樹の初期作品である。
 
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ブルースカイ 桜庭一樹 書評

 4点

第一部……17世紀ドイツ。10才の少女マリーにふりかかる絶望的な不幸。
第二部……西暦2022年、シンガポール。3Dアーティスト・ディッキーの前に忽然と現れた少女。彼女は時空管理官に追われていて……。
第三部……どこにでもいる女子高生、青井空のポートレート。

 ご覧のように本書は三部構成になっているが、物語自体は全くリンクしておらず、そこに青井空という女子高生が「落ちてくる」ことによってかろうじて連作というスタイルを保っている。この設定を取っ払って、独立した短編集にした方がいっそマシである。
 第一部で描かれている魔女狩りのシーンはゾッとするほど残酷で、よく描けている。そこまではいいのだが、著者の悪い癖で、残酷な運命にさらされた直後にアットホームなエピソードを挿入し、笑い話にしてしまうのはいただけなかった。そこで急速に興醒めしてしまう。惜しいなあ。
 第二部は、近未来の若者の群像劇を土台にして、著者の少女論・青年論(弱者論とでも言えばいいのだろうか)をぶっている。そこに唐突に少女が”降ってきて”、わけもわからずただ逃げ惑うだけ。
 第三部では、等身大の少女を描くのがうまいなあ、とあらためて感心させられた。オモシロクはなかったが……。
 著者の良い面と悪い面が同居している一冊。ラノベの方が自由に遊べるから、作者に合っているのでは? まだこれくらいのことしか言えません。4点評価となった。

少女には向かない職業 桜庭一樹 書評

 6点

 田舎暮らしの中学生・葵は、クラスの中ではムードメーカータイプの女の子。しかし、家で待ち受けているのは、酒浸りの義父と、娘をかえりみることのない母親。家庭内で見せる内向的な自分と、学校でのお調子者の自分。本当の自分はどっちなのだろうかと悩みながら日々を過ごしていた。そんな中、ちょっとした復讐心から行った悪戯がきっかけで義父が死んでしまう。その日から葵の心の中に”人殺し”の負い目が巣くうようになった。葵のせいで父が死んだということを知っているのは、級友の静香だけ。静香もまた家庭内に問題を抱えていて……。

 ジュヴナイル版の「罪と罰」といったところか。著者は、シリアスな場面を茶化すようなところがあって、それは読んでいて邪魔だと思った。シリアスにしようと思えばいくらでもやれる筈である。
 罪の負い目から、思い悩む日がつづくわけだが、中学生ということもあって、ラスコーリニコフほどのつきつめた焦燥感は感じられない。ラストのあっけない幕切れもイマイチだった。犯罪計画があまりにもずさんである。「中学生か!」と突っ込みを入れたくなる。(あ、中学生なのか)
 創元推理文庫という非ラノベ系のレーベルから出たにもかかわらず、ラノベ風の構成を捨て切れなかったのだろうか。それとも、桜庭作品には少女を主人公にした物語が多いようだから、数あるパターンの一つとして、あえてこういう形を選んでみせたのだろうか? その可能性も捨てきれない。
 まあ、そこら辺のところは、作者の他の作品を読んでみなければわからないだろう。次の予定は「ブルースカイ」。楽しみ楽しみ。ウシシシシシ……。

 
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採点は10点満点です。
6・5点以上がおすすめ。
6点は佳作。
5・5点は好みによる、といった感じです。

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