ロスト・シング ショーン・タン 感想
6・5点
海辺で出会った奇妙な生き物。
動物のようでもあり、機械のようでもある。
どこから来たのか、何をしているのかも知れない不思議な迷子と
その帰るべき場所を探す少年が味わうちょっぴり奇妙なアドベンチャー。
それが何なのか、何がしたいのかもわからない
得体の知れない生物を拾った少年。
飼い主はどこにるのか? 持ち主は誰なのか?
そんなことどうだって良い。
とにかく少年は迷子と出会った。それだけが物語の真実だ。
どこかノスタルジックな雰囲気をただよわせる海辺の町。
スチームパンクを思わせる、どこでもない世界が舞台。
はたして、正体不明の生き物に帰るべき場所などあるのだろうか?
何ものにもしばられない、「そういうものってのも、世の中にはあるもんさ。つまり……」と、少年の友人は語る。「ただ居場所がないものってのがさ」
誰からも見向きもされない、そんな経験はおありだろうか?
世の中からしたらどうでも良いなんて言われてしまいそうなちっぽけな存在。
それでも、必ず帰るべき場所がある。
自分を必要としてくれる人がいる。
このだだっ広い世界では、世間に認めてもらえるタレントなんてたった一握りのケースにすぎない。
それでもこの世界は、ぼくらみたいな、より大勢のちっぽけな存在でなりたっている。
彼らが見つけた居場所には、名前も知らない生き物が寄り集まっている。
そのひとつひとつが強烈な存在感を放ち、「ぼくはここにいるよ!」と、まるで大声で叫んでいるかのようだ。
ロスト・シングは、椎名誠のアド・バードや、その表紙を飾ったたむらしげるの作品世界にも通じるところのある、とびっきりファニーな物語です。
本書はショーン・タンの処女作であり、作者自身の手によってアニメ化され、アカデミー賞短編アニメーション賞を受賞している。

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