カムパネルラ 山田正紀
6点
宮沢賢治の研究者だった母を失ったぼくは、母の遺言通り遺灰を散骨するため岩手県へと向かった。
ふと気がつくとぼくは雨の中、賢治が亡くなった昭和8年の花巻に迷い込んでいた。
そこで出会った人々はぼくをジョバンニと呼び、それだけでなく、銀河鉄道の夜の中で亡くなったカムパネルラを殺した犯人だと名指しする。
なぜカムパネルラは死ななければならなかったのか?
物語は思わぬ真相に向かって突き進んでいく。
舞台は思想統制の敷かれた日本から昭和8年の花巻へ。
そこでは宮沢賢治が作り出したキャラクターが実在していて、ぼくはジョバンニと呼ばれている。
物語の前半はカムパネルラ殺しの謎を追うミステリーで、途中からジョージ・オーウェル1984年ばりのディストピア小説に変貌する。
銀河鉄道の夜第4次稿から消えたブルカニロ博士、物語の中でなぜカムパネルラが死ななければならなかったのかといった謎が絡み合い、宮沢賢治が銀河鉄道の夜を改稿した理由を独自の視点で浮き彫りにしていく。
銀河鉄道の夜をこんな風に解釈したのは山田正紀がはじめてではないだろうか。
もう一度原作を読んでジョバンニに会いたくなる、そんな作品です。

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