2140 ピーター・ピンセントの闘い ジェマ・マリー 感想
2140 ~ピーター・ピンセントの闘い~
posted with あまなつ on 2013.05.27
橋本 恵
ソフトバンククリエイティブ(2009-04-08)
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7点
収容所から脱走して数か月後。両親の犠牲によって市民権を得たアンナとピーターは、好奇の目にさらされながらも懸命に暮らしていた。
収容所に残された”サープラス”の子供たちを救うべく、地下組織と関係を持つピーターは、長命種”リーガル”の元凶となった製薬会社に潜入した。そこで彼が見た衝撃的な真実とは!?
前作のラストでサープラスと呼ばれる奴隷の立場から解放されたアンナとピーターだったが、ふたりを見る世間の目は依然として厳しい。あからさまな侮蔑を受けながらも、マイノリティーとして毅然とした態度を貫き通すことができるのか? こういった差別に立ち向かうには、ふたりはまだまだ幼く、長命措置を受けるべきか否か揺れ動く姿が描かれている。
不死になることそのものは悪ではない。しかし、その代わり、自由に出産することを禁じられている。出産は罪だ、新生児は罰を受けなければならない、というのは横暴そのものである。これは、医療技術だけが急速に発達した偏った未来の話だが、こういった問題提起は今に始まったものではない。
人口が増えることによって、食糧、仕事、エネルギーが枯渇し、生活の基盤が揺さぶられることになるのではないか、というテーマは、ハリイ・ハリスンの「人間がいっぱい」でも論じられていることだ。いわゆる難民問題であり、格差の問題でもある。
こうやって考えると小難しい話だと思われるかもしれせんが、本書はあくまでもヤングアダルト小説。そこまで深く論議されていない(そこがちょと物足りない部分でもあるのだが)。スピーディでサスペンスフルな展開は前作を凌駕している。
前作と同じく、物語はあっさり幕を閉じてしまうが、それは次回作への布石か、と勘ぐってしまう。本書が刊行されたのが2009年。そろそろ新作が出てもいいんじゃないかと思ふ今日このごろである。
人間がいっぱい (ハヤカワ文庫SF)
posted with あまなつ on 2013.05.27
浅倉 久志
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