ねこのすっぱ抜きサラダ 吉田篤弘・音・浩美

a piece of cake 吉田浩美 書評

 6点

 著者の吉田浩美氏はクラフト・エヴィング商會のメンバーである。これは、彼女が編集した文芸誌のようなスタイルの本。彼女の小説が掲載されているわけではなく、夫の吉田篤弘氏やフジモトマサル氏などの作品で構成されている。
 中でも気に入ったのは、吉田篤弘氏のショートショート「ものすごく手のふるえるギャルソン」だ。手が震えてしまい、どうしてもお客さんのコーヒーをこぼしてしまうギャルソン。失敗して落ち込んでいるところに恋人がやってきて……。ほっこりするお話でした。
 他には、『という、はなし』で吉田篤弘氏と共作したフジモトマサル氏の描き下ろし絵本が秀逸。セリフはないのに、きっちり物語として成立している。彼の他の著作を購入したくなってきた。。。
 そして、フジモト氏の奥さん、片岡まみこさんの「コルク人形」の作り方。こういう世界があったのかと感心。
 もう一人、クラフト・エヴィング商會などでおなじみの写真家、坂本真典氏の写真。今回挑んだのは、早朝の銀座。誰もいない大都市の姿は新鮮でした。
 仕事や勉強の合間にピッタリな本です。1時間で読み終えました。
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小さな男*静かな声 吉田篤弘 書評

 5・5点

 百貨店に勤める「小さな男」の小さなこだわりと細かいウンチクの数々。そして、自分の声に自信を持てずにいる深夜のラジオパーソナリティ・静香。そんな二人の濃密すぎるほど濃密な人物描写が延々と書き連ねられている。
 前半部分は、特にコレといった展開もなく、正直、読んでいて眠くなってしまうほど退屈だった。たとえば、小さな男が出勤するくだり。デパートの6階にたどり着くまで10ページ以上も割いている。ここは重いまぶたをなんとかこじ開けて、ぜひ最後まで読破してほしい。最後まで読むと、いつかまた再読したいと思わせるような不思議な魅力を秘めている。
 物語は、後半になるにつれてようやく動き出す。これまで他者に対して何ら興味を示さなかった小さな男が、自分の殻を破り捨て、次々と新たな事柄に挑戦しはじめる。(そんな大それたことではないのだが)
 一方、静香の方は、ラジオ番組にも慣れて、心にゆとりを持つようになり、疎遠だった弟にも理解を示すようになっていく。
 主人公の二人が作中でからむことはないが、小さな男がいつも聴いているラジオが静香の番組だったり、小さな男が入会した読書クラブのメンバーが静香の友人だったりと、互いの人生観が少しずつリンクしていくのは、いっそ爽快だった。
 読みづらさを差し引いて、5・5点評価となった。
 

それからはスープのことばかり考えて暮らした 吉田篤弘 書評

 6点

 架空の街・月舟町に暮らす人々の、何ということもない日常風景。
 主人公は、この街で様々な人々との出会いを経験し、自堕落な生活をあらため、人として成長してゆく。アパートの大家・マダムの母性、男手ひとつで息子を育てる安藤さん、妙に達観した態度を見せる安藤リツくん、通いの映画館でいつもすれ違うおばあさんなど、主人公が出会った人々はみんな情にあふれ、悪意などひとかけらも見せない。それがなんだか心地いい。
 無職だった主人公は、料理の腕を見込まれて、オリジナルのスープを作るよう注文を受ける。そのスープのおいしそうなことったらない。それだけでなく、作中に登場する料理はどれもみな旨そうで、思わず知らず食指が動く。かといって、主人公は別に究極の料理人を目指しているわけでもないし、料理小説のように(そんなのあったっけ?)レシピが掲載されているということもない。物語は、大きなヤマ場をむかえることもなく、淡々と進んでいく。
 本作は「つむじ風食堂の夜」の姉妹編と位置付けられている。かといって、前作の登場人物が出てくるわけではないので、これを単体で読んでも差し支えない。しかし、つむじ風食堂の夜の方がデキがよかったので、まずそちらから読むことをおすすめする。
 何も起きない物語……。それを長編に仕立て上げる著者の力量は素晴らしいと思う。好きな人にはたまらない作品だと思います。

 

という、はなし 吉田篤弘 書評

 6点

 筑摩書房のPR誌「ちくま」に掲載されたフジモトマサル氏の24枚のイラスト。これに文章を添えてできあがったのが本書である。なんと、イラストが最初にあって、後から吉田篤弘氏が文章を書いたのだという。ふつう、文章ありきで、イラストが後、でしょう。そこからして異色。
 フジモト氏のイラストは、どれも「読書」をテーマにしていて、灯台の下でペンギンが本を読んでいたり(ベスト!)、夜行列車の中で黒ねこが本をひもといていたりと、どれもこれも可愛らしいものばかり。

「まあ、のんびり行きましょうや」と語りかけてくるような本になっており、たとえば、日常の些末なことは「知らぬふり」(10頁)、”どこかで「時間」を売ってくれないものか”と考えをめぐらせれば、「1時間をひとつください。その<ゆったり>味のやつを」といった具合。
 ちなみに(今日はちなむぜえ……)太古の地球は今よりも自転速度が速くて、1日がもっと短かったそうです。それが数十億年を経て、今の24時間になったんだとか。恐竜たちは忙しなく生きてたんだろうか……。
「このあいだ、とても可愛らしい女の子がお客さんでいらっしゃいまして」「僕が市場で見つけてきた、とっておきの本を買ってくれたんです」「俄然、仕事が楽しくなりました」フム。わかる。
 どのページをめくってもホンワカすること間違いなし。息抜きにどうぞ。

空ばかり見ていた 吉田篤弘 書評

 5点

 流しの床屋ホクトさんがかかわる12の物語。舞台は日本だったり、外国だったり、どことも知れないファンタジーの世界だったりするのだが、今回もまた、例によって、キーマンであるはずのホクトさんがちらっと出てくるだけだったり、床屋である必要がなかったりと、イマイチな構成だった。
 この中で印象的なのは、ローストチキン・ダイアリーだろうか。毎日飲んでいる紅茶のティーバッグに長期帰省中のママがしのばせたささやかなプレゼント。父娘はプレゼントに託されたキーワードを手掛かりに、短い二人だけの時間をなんとかやりくりしようとするのだが……。という話。アットホームでほっこりさせてくれます。
 他には、本作のイントロダクションとなる七つの挟、幼馴染との微妙な男女関係を描いた彼女の冬の読書、流星雨にささやかな願い事をささげる星はみな流れてしまった。屋台を営む夫婦が見せる小気味のいいかけあいが読んでいて楽しい。

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SF・ファンタジー系の小説、漫画、映画のレビューおよび、8匹のねこが生息するペットブログを展開中☆

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採点は10点満点です。
6・5点以上がおすすめ。
6点は佳作。
5・5点は好みによる、といった感じです。

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